まどろみ3秒前

「やっぱ何度見ても崩壊しかけてる目。ずっと笑顔で生きてる目してないの、好きだわ」

「っ…」


聞いたこともない。崩壊しかけてる目が好きとか。この人、頭おかしいんじゃないか?

私が頭おかしすぎて私しか見れてなかった。

今さら気づいた。

この人、頭おかしいんだ。


「まじで、一目惚れ。あなたを見たとき、死にたそうなあなたと俺で、一緒に死にたいなぁって軽い気持ちで思ったんですよね。まあ、だから、夢なんですけどねー」


自分の唇を噛んだところで、やっとのこと彼は私の頬から離した。


「これが翠さんじゃなきゃだめな理由」


私は自分の頬を自分の手で抑えながら、何も言えなくなる。


「だから、翠さんがひとりで橋から死のうとしてるのを止めたんです」

「…」

「偽善者だのなんだの言ってたけど、別に俺、そんな下らないもんじゃないんで」

「下らないって…ひど……」


崩壊しかけてる目の理由を聞きたくて、だから私を橋に呼び出したってこと?

私が死のうとして自殺を止めたのは、私ひとりで死のうとしてたからだった、らしい。



はぁー!と大きく息を吐きながら、彼は背伸びして立ち上がる。来ている制服は、見たことがあるような気がする。


「ここ、めちゃくちゃいい」


彼は空を見上げる。


「…別に、私は気分転換にきただけで」

「あっクローバー咲いてる」


彼の目線を追った先の下には、クローバーが沢山咲いていた。初めて、知った。

ここ、クローバーあるんだ。

まるで無邪気な小さな子供のように、彼は四つ葉のクローバーをさっそく探し始めた。
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