まどろみ3秒前

猫好きで、意外にも優しい一面が見れたし、もう何も今日という日に悔いはない。いつの間にか寒さも気にならなくなったようだ。


「じゃ、さよなら。ほんと、ありがとーございました。4日ぶりに人と話せて幸せだったから、引き止めたりしてごめんなさい」


私は笑みを浮かべて、朝くんよりも先に立ち上がり、自分の傘を手にとる。

まあ、人と話せて幸せ、なんて一度も思ったことないけど。


「あ、次に会う時は、敬語なしにしよ?」

「あ、はい。じゃなくて、うん。朝くん。…さよなら。また」


またなんて、そんなの叶うことなのかもわからないのに、人は約束を誓ってしまう。

そのために人は頑張るけど、私には、頑張る意味もない。


「待ってるから」


曖昧になってしまったけど、しっかりと頷いた。そして、笑みを浮かべて笑った。

初めて会った橋の上での私と今の私の笑みは、違うのだろうか、なんて思った。いや、同じだろう。何も変わってなんかないから。


でも、その全部を、愛してくれているのなら。


朝くんには、たくさん泣き顔を見られた。何故か抱き締められた。猫を飼っていること、色んなことを知れたし、沢山話してしまった。

久しぶりに、人と何時間もこうして話したかもしれない。逃げてきたから。でも、この時間をどうでもよくなく大切にすることができた私を、今日という日は誉めてやりたい。








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