私と彼の溺愛練習帳
「……雪音さん、それを男性に言う意味、わかってる?」
「な、なにも言ってないから!」
「もう遅いよ」
 閃理は雪音を抱きしめる。 

「僕……やっぱりあなたのすべてがほしい」
 閃理はいったん体を離して雪音を見つめた。
「あなたの心があればいい。そう思ってた。だけど……あなたのすべてを知りたい。すべてを僕だけのものにしたい」

 雪音は閃理を見つめ返した。
 彼のやわらかい髪は陽を受けて金色に輝き、ヘーゼルの瞳は茶色と緑が混在して、複雑に神秘的にきらめく。

「今夜は僕に帰って来て」
 雪音は黙ってうなずき、彼の手をぎゅっと握った。



 久しぶりに彼のマンションに帰った。
 彼はまた夕食を作ってくれて、二人で楽しく食べた。
 その後、雪音はシャワーを浴びた。閃理が用意したバスローブを着て出ると、彼が髪をかわかしてくれた。
 いつもの優しい手に、雪音はほっとした。

 ドライヤーを棚に戻すと、彼は雪音を抱き上げた。
 驚く雪音を繊細なガラス細工のように運び、ゆっくりとベッドに横たえる。
 閃理が電気を消した。ベッドサイドの薄暗いランプだけが二人を照らす。

 嫌になったらいつでも言って。
 そう言って、閃理は雪音にキスをした。
 雪音は抵抗せず、彼に身を任せる。

「愛してる」
 言いながら、彼は何度もキスをする。
 彼がバスローブを脱がせるのに合わせて脱いだ。

「雪音さん、きれい」
 見ないで、という言葉は閃理の唇で塞がれた。彼の長い指が、唇が、雪音の肩をなぞり、指をなぞり、すべての形をなぞる。雪音はこらえきれず声を上げた。

 閃理は優しく雪音を愛した。
 気遣いながら、ゆっくり、丁寧に。
 彼の与える熱に、雪音の中でなにかが溶けていく。
 彼の愛は、彼が淹れるココアよりも甘かった。

 雪音はただ愛に溺れた。
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