初めての溺愛は雪の色 ~凍えるため息は湯けむりにほどけて~
「先輩、顔赤くない?」
「お酒のせいよ」
「じゃあもう飲むのはやめたほうがいいね」
 蓬星が言う。
「まだ残ってますから」
 初美が言った直後、蓬星が彼女のグラスを飲み干した。

「これでもうないよ」
 笑顔を向けられた。ただそれだけで、高鳴る鼓動が止まらない。
 普通、会ったばかりの人にそんなことする? 飲みかけだったんたよ?
 初美の動揺などおかまいなしで、体を寄せて店のタブレットを彼女に見せる。
 初美はどきどきしたが、逃げ場がない。

「ドリンク、どれにする?」
 彼は笑顔で聞いてくる。
「オレンジジュースを」
 慌てて言うと、ぱぱっと注文してくれた。

「私もお願いしますぅ」
 瑚桃が言うと、彼はタブレットを手渡した。
「自分で選んだほうがいいよ」
 彼は笑顔を崩さず言った。
 瑚桃は不満そうにタブレットを受け取り、カクテルを注文していた。
 


 歓迎会自体は平和に進んだ。
「飲みすぎちゃったみたーい」
 瑚桃は蓬星にしなだれかかり、言った。
 嘘くさい、と初美は思った。
 もうそろそろお開きかな、という頃合いだった。

「それなら先に帰る?」
 蓬星がたずねる。
「送ってくれますかあ?」
「じゃあコート着て」
「はあい!」
 瑚桃はいそいそと帰り支度を始める。

「ちょっと彼女を送ってくるので」
 そう言って、彼は席を立った。瑚桃は彼の腕にしがみつくようにして歩いていった。
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