初めての溺愛は雪の色 ~凍えるため息は湯けむりにほどけて~
「ため息、多いね」
「すみません」
「ため息が多いと幸せが逃げるって言うけど、どう思う?」
「どうって」

 過去に人に言われて気になったことはある。ため息をつかないようにと心がけたときもあるが、どうしても出てしまうのは仕方ないとも思う。
 あるとき、ため息すら禁じられるっておかしくない? と思って我慢をやめた。

「幸せなときにもため息が出るし、そんな悪いことじゃないよね」
 続いた蓬星の言葉に、少し驚いた。肯定する人に初めて会った気がする。
「そう……でしょうか」
「ため息をつくと、嫌なものがちょっとでも吐き出された気持ちにならない?」
「わかります。なんか、少しは軽くなる気がします」
 答えると、くすりと彼は笑った。

「ため息と一緒に嫌な気持ちも出してしまうといいよ。言いたいことがあったら言ってほしい」
 言いたいこと。
 それならある。
 だけど、こんなところで言えない、とも思う。

「仕事、やりづらくない?」
 そっちか!
 初美は自分の印象ばかり考えていたことに気づき、恥ずかしくなった。

「私は……企画にいていいんでしょうか」
 初美はうつむいて言った。
「たまたま異動になっただけなんです。本当に企画開発をやりたかった人がやるべきなんじゃないでしようか。私、なんにも知らなくて」

「会社員だから、異動は仕方ないね。やってみないことには適性もわからないし。俺は君が企画に向いてないなんて思わないよ」
 彼の言葉に、戸惑う。
「まだ二週目だから、わからないことばかりだよね。困ってることがあったらいつでも言って」

 あなたに困ってます。
 それが言えたらどんなにいいだろう。
 隣にいるだけでどきどきして、瑚桃と仲良くしてるとそわそわしてしまう。
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