婚約破棄されたので悪女を演じることにしました~濡れ衣を着せられた聖女ですが、すべて捨てて自由になるのでお構いなく~
まるで悪魔のような囁きに、思わず目を見張った。
そうだ。すでに婚約破棄を受け入れると宣言したのだ。この国に縋り付く必要はない。でもそのために彼を巻き込んでよいのだろうか。
「……私で、よろしいのですか?」
「あなたがいいんです。あなた以外、何も要りません」
話を合わせるだけなのに、ただの演技のはずなのに、彼の目は真剣で、言葉一つ一つに熱がこもっているようだった。
できれば穏便にこの場を収めたかった。大事にしたくなかった。
今まで家のため、恩のある国王のためと我慢してきたけれど、これ以上彼の顔色を伺う必要はない。
――ならば、演じてごらんにみせましょう。稀代の悪女を。
私は彼の手を取ると、振り返って壇上にいるライアンを見据えた。
「神官様がナタリー様を聖女としてお認めになるのであれば、私はもう用済みですよね? 最後にひとつ、よろしいでしょうか」
「……まぁいいだろう、これが最後だ。申せ」
私はライアンからナタリーへ視線を移す。無表情の私が怖かったようで、先程まで勝ち誇った笑みを浮かべていた彼女は一瞬ひるんだように見えた。
「ナタリー様は先程、戦場で多くの人々を癒すとおっしゃっておりましたが、私はおすすめいたしません」
そうだ。すでに婚約破棄を受け入れると宣言したのだ。この国に縋り付く必要はない。でもそのために彼を巻き込んでよいのだろうか。
「……私で、よろしいのですか?」
「あなたがいいんです。あなた以外、何も要りません」
話を合わせるだけなのに、ただの演技のはずなのに、彼の目は真剣で、言葉一つ一つに熱がこもっているようだった。
できれば穏便にこの場を収めたかった。大事にしたくなかった。
今まで家のため、恩のある国王のためと我慢してきたけれど、これ以上彼の顔色を伺う必要はない。
――ならば、演じてごらんにみせましょう。稀代の悪女を。
私は彼の手を取ると、振り返って壇上にいるライアンを見据えた。
「神官様がナタリー様を聖女としてお認めになるのであれば、私はもう用済みですよね? 最後にひとつ、よろしいでしょうか」
「……まぁいいだろう、これが最後だ。申せ」
私はライアンからナタリーへ視線を移す。無表情の私が怖かったようで、先程まで勝ち誇った笑みを浮かべていた彼女は一瞬ひるんだように見えた。
「ナタリー様は先程、戦場で多くの人々を癒すとおっしゃっておりましたが、私はおすすめいたしません」