婚約破棄されたので悪女を演じることにしました~濡れ衣を着せられた聖女ですが、すべて捨てて自由になるのでお構いなく~
最高の笑顔で最大の皮肉を告げると、会場内の空気が一瞬にして凍りついたのを感じた。ライアンに至っては顔を真っ赤にして今にも噴火しそうだ。
今まで言えなかったことを口にしてすっきりした爽快感をかみしめながら、私はまたローグベルト殿下の手を取って堂々と会場を後にする。
すぐ近くには我が家の馬車が停まっていて、待っていた従者は驚いた顔をしていた。
「え、エマリネお嬢様? まだ夜会は終わっていないはずでは……」
「いいの。……お願い、馬車を出してくれる?」
困惑しながらも従者は「わかりました」と言って準備を始めた。どう説明しようか考えながら馬車に乗り込むと、ローグベルト殿下は乗り口で留まった。
「殿下、お送りいたしますので」
「いいえ、私も迎えが来ていますのでここで。それより」
「……?」
「すごくいい顔をされていますよ、エマリネ」
今はただ、ただただ嬉しくて頬が緩んでしまう。
生まれてから背負わされる聖女の使命、決められた政略結婚――私がどうあがこうが、王族との取り決めが国の絶対である以上、断ることはできない。悔しくて泣いた日々だってあった。
そんな日常からようやく解放されるのだ。これを喜ばずしてなんと言おう。
「……やっと、外に出られますから」
もうあの人に想いを寄せるフリをしなくていい。聖女の役目を背負わなくていい。
代々伝わる伝承に背くことになっても、滅ぶのは王族だけだ。