婚約破棄されたので悪女を演じることにしました~濡れ衣を着せられた聖女ですが、すべて捨てて自由になるのでお構いなく~
俯いたその瞬間、ざわついた会場内の空気がしんと静まった。低く力強い声色だけで威厳が溢れている。
人混みから颯爽と現れたのは、艶めく黒髪に水晶のように透き通った碧眼の見目麗しい男性だった。黒を基調とした貴族服にゴールドの刺繍が映え、ジャケットの下襟に付けられたラペルピンはシンプルながらも赤い石がはめ込められており、美しく輝いている。
男性は私の前へやってくると、うやうやしく手を差し出し告げる。
「ヴァニタス王国第二王子、ローグベルト・ヴァニタスと申します。ウィルメント王国聖女、エマリネ様にお目にかかれて光栄です」
「ヴァニタス王国……!?」
途端、周囲がまたざわつき始めた。ヴァニタス王国といえば、魔導具の核となる資源が豊富で有名な隣国だ。確かウィルメント王国と友好条約を交わしているはず。
しかもその第二王子といえば、公に出ることはほぼなく、現王太子の兄を裏で支えるために各地を奔走していることで有名だ。その分、よからぬ噂も十分ついてくるが、どれも確証はない。
そんな第二王子が、どうしてこの国に?
私が考えていることを悟ったのか、ローグベルト殿下はフッと笑みを浮かべながら、内ポケットから今回のパーティーの招待状を取り出し、見えるように掲げた。
「驚かれるのも無理はありません。兄は多忙のため、私が代わりに参りました。もちろん、その旨は事前にお伝え済みです」
「……ええ、確かにいただいておりました」
確かにパーティーの招待状を送っていたし、返事ももらっていた。でも私は、彼とは面識は一度もないが、やけに丁寧な筆跡や言葉遣いに、どんなひとだろうと一瞬だけ心躍らせたこともあったかもしれない。
返事の内容はライアンにも伝えたはずだが、頭の中がお花畑状態の彼は聞いていなかっただろう。もちろん、ナタリーも知らない。
人混みから颯爽と現れたのは、艶めく黒髪に水晶のように透き通った碧眼の見目麗しい男性だった。黒を基調とした貴族服にゴールドの刺繍が映え、ジャケットの下襟に付けられたラペルピンはシンプルながらも赤い石がはめ込められており、美しく輝いている。
男性は私の前へやってくると、うやうやしく手を差し出し告げる。
「ヴァニタス王国第二王子、ローグベルト・ヴァニタスと申します。ウィルメント王国聖女、エマリネ様にお目にかかれて光栄です」
「ヴァニタス王国……!?」
途端、周囲がまたざわつき始めた。ヴァニタス王国といえば、魔導具の核となる資源が豊富で有名な隣国だ。確かウィルメント王国と友好条約を交わしているはず。
しかもその第二王子といえば、公に出ることはほぼなく、現王太子の兄を裏で支えるために各地を奔走していることで有名だ。その分、よからぬ噂も十分ついてくるが、どれも確証はない。
そんな第二王子が、どうしてこの国に?
私が考えていることを悟ったのか、ローグベルト殿下はフッと笑みを浮かべながら、内ポケットから今回のパーティーの招待状を取り出し、見えるように掲げた。
「驚かれるのも無理はありません。兄は多忙のため、私が代わりに参りました。もちろん、その旨は事前にお伝え済みです」
「……ええ、確かにいただいておりました」
確かにパーティーの招待状を送っていたし、返事ももらっていた。でも私は、彼とは面識は一度もないが、やけに丁寧な筆跡や言葉遣いに、どんなひとだろうと一瞬だけ心躍らせたこともあったかもしれない。
返事の内容はライアンにも伝えたはずだが、頭の中がお花畑状態の彼は聞いていなかっただろう。もちろん、ナタリーも知らない。