君は優しい嘘つき

「よぉ」

一本道を歩いてこちらに来る人影。

月の光に晒されたその人は、間違いなく歩だった。


なんで。電気消えたのに。寝たんじゃないの。もう来ないって言ったのに。またこんな時間にひとりで。いい加減呆れられたかも。見捨てられるのかな。

ぐるぐると纏まらない感情が頭を駆け巡る。


立ったままの状態で、座ることも動くこともできずにいる私の側まできた歩は、ぎしりと音を立ててベンチへと座った。

その音でやっと呪縛から解放されたかのように身体が自由になる。

見下ろすような形で歩の方へと身体を向ければ、その視線は合わさることはなく、ただ真っ直ぐに暗闇を見つめていた。


「散歩」
「え?」

ぽつりと小さく呟いて。


「だから、散歩」

こちらを見上げた歩が、にやりと口の端を上げて笑った。


「反抗期だからな」
「さんぽ。はん、こうき」
「そ」

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