君は優しい嘘つき

ここから見える歩の部屋。

多分、歩の部屋からもここが見えるのかもしれない。


私がここに来るようになったのは、高校生になってからだ。

そこまで頻繁に来ていたわけじゃないのに、どういうわけかあの日から毎回歩に遭遇するのが偶然なわけがないのだ。


「歩の部屋って昔と変わってないの?」
「へ? そうだけど」
「そっか」
「え、なに。急にどした?」


多分、歩は私が望めばこの先も知らないふりをしてくれる。
偶然を装って私の側にいてくれる。

自惚れかもしれないけれど、歩は優しいから。

私みたいな人間がダメだって思うのに、そんな所にどうしようもなく惹かれてしまうのだ。


「歩の部屋から、ここって見えるの?」


驚いたように目を見開いた歩は、考えあぐねるように一瞬だけ視線を逸らした後、伺うようにこちらを見てきた。


「もう、大丈夫だから」

聞かないでほしいなんてもう言わない。
知らないままでいてほしいなんてもう言わない。

真っ直ぐに見つめれば、観念したように浅く息を吐いた歩が小さく口を開いた。


「うん。見えるよ」

その言葉に、張り詰めていた糸が切れたかのように、力無くベンチへとへたり込んだ。

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