君は優しい嘘つき
「ありがとう。知らないふりしてくれて」
「お礼言われるようなことは何もしてねぇよ」
そんなことない。
毎回わざわざ嘘をついてまで来てくれて、私が何も話さなくていいようにいっぱい話を聞かせてくれて。
「なんでそこまでしてくれるの」
もう家族でさえもこんなに気にかけてはくれないのに。
「そりゃ心配だろ」
「心配?」
「うん」
それ以上なにも言わなくなってしまったけれど、女の子が夜に1人でいることとか、あんな家庭環境での私の精神的なものとか、多分歩が言いたいのはそんなことだ。
私だからというわけじゃなさそうだけど、それでも良かった。そんな優しいところが好きなのだから。
「ありがとう」
「だから別に」
「うん、でもありがとう」
そう言って笑えば、照れくさそうに歩も笑った。