婚約者の浮気相手は母でした。
 自室を父親に見られるというのは少々恥ずかしかったが、今はそんなことを言っている場合ではないだろう。これは明らかな非常事態だ。

「それで、何があったんですか?」
「使用人を通じて連絡があったのだ。アメルタは帰りが遅くなるらしい」
「帰りが遅くなる? それは……」

 部屋に入ってからすぐ、お父様はすぐに本題を切り出してきた。
 お母様の帰りが遅くなる。それは少々、気になる情報だ。

「このタイミングで、ですか?」
「ああ、妙だとは思わないか?」
「まさか、お母様は……」

 お父様の言葉に、私とイルルドは顔を見合わせた。
 今日に限って、帰りが遅れる。そんな偶然があるだろうか。なんというか、それは考えにくい事柄である。
 故に私は、一つの結論を出した。恐らくお母様は、気付いているのだ。自分の浮気がばれているということに。
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