婚約者の浮気相手は母でした。
 夕方、食事と入浴を終えた私はイルルドとともに自室にいた。
 お母様は、まだ帰ってきていない。使用人を通じて連絡があってから、彼女は一向に帰ってくる気配がない。

「……どうやらお母様は、帰るつもりがないみたいね?」
「ああ、そうみたいだね。一応、お父様が捜索しているみたいだけど」
「もうこの辺りを離れているのかしら?」
「ばれているとしたら、そうなんじゃないかな?」
「……もっと慎重に行動するべきだったわ」

 お母様がばれていると気付いたのは、恐らく私に見られたことを悟ったからなのだろう。
 考えてみれば、ばれていてもおかしくはない。隠れているつもりだったが、所詮素人の私が完全に気配を消すなんてできはしないだろう。何かしらの痕跡などから、お母様は私があそこにいたことを理解したのかもしれない。

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