この結婚には愛しかない


部屋のインターホンが鳴った。

「(伊織さんっ!)」急いで玄関に出向き、内側から鍵を開けた。


「お疲れ様です」

「遅くなってごめんね」

「いえ、どうぞお上がりください」

「お邪魔します。いい匂いがする」


19時を少し回って、仕事を終えた伊織さんがうちに来てくださった。晩ご飯の下ごしらえは終わっていて、後はお肉を焼くだけだ。


「ただいまのハグしたいな」

革靴を脱いで揃えた伊織さんが、カバンを片手にハグ待ちのポーズ。

それに応えてハグをした。ウッド系の香水の匂いに、夏の香りが混じっている。

こんな風に、毎日ただいまお帰りのハグをしたい。行ってらっしゃい行ってきますのハグも。


自然と伊織さんと2人のルーティンになったらいいな。


「エプロン姿可愛いね。ハグじゃ止まらなくなりそう」

「ご、ご飯すぐ出来ます」

「ははっじゃあ食後のデザートだね」

「(なにが?)」


伊織さんが私の家にいる...

何度も妄想済みのシチュエーションに、ドキドキそわそわして落ち着かない。
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