この結婚には愛しかない
「ねえ、あれなんて言う名前?あの観葉植物」

伊織さんが指さされたのは、ベッドのヘッドボード近くの我が家のシンボルツリーで。まさか名前を聞かれるとは思わず、一瞬答えに躊躇する。


「...神田さんです」

「え?いや、なんていう種類かな」

「あ!そういう、すみません、ウンベラータです。フィカスウンベラータ」

「で、神田さんって名前付けてるの?」

「聞かなかったことに、」

「できないな」

伊織さんが私を捕まえベッドに腰掛ける。そのまま足の間に座らされ、バックハグから逃げられない。

「あれは?テレビボードの上の」

「サンスベリアです」

「うん。それは知ってる。なんて呼んでるの?」

「名前はつけてません」

「じゃああそこのモンステラは?」

「...名前はありません」

ぐ、と抱きしめる腕に力が入る。こめかみにキスを落とされ、綺麗な顔で頬ずりされる。


「なんであれだけ神田さん?」

低い声が、耳にダイレクトに響く。確信犯は逃がしてくれない。
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