この結婚には愛しかない



Jayden(ジェイデン)そんなに笑うなよ」

「笑わずにいられるかよ。あのミシェルが伊織に振られていたなんて」


アメリカ人らしいオーバーリアクションで、俺の肩を叩きながら笑う男性。ジェイデンはシンガポール支社のナンバー2で、日本の本社にいたこともある。

年齢は一回り上だけれど、気心知れた友人だ。奥さんと、まだ小さな子どもが2人いる。2人とも女の子で、俺に懐いてくれていてとてもかわいい。


シンガポール出張の楽しみは、毎晩のようにジェイデンと飲みに行くことだったが、それも今夜が最終日だ。

仕事の方はというと、結論から言えば買収したいと思える先はなかった。あと1年動向を見て判断したいと思える企業が1社あった。


すっかり顔なじみになったバーのカウンターに並んで座り、ビールを飲みながら食事を楽しんでいた。

「なんて言って振ったんだ?彼女のことだから強引に迫ったんじゃないのか?使えるものはなんだって使うような女性だろう?」

「ははっそうだね。強引だったよ」

彼女らしい。と大笑いしながら俺の続きを待つジェイデンが、瓶ビール2本を追加で注文した。
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