この結婚には愛しかない

「迎えに行きたい子がいるって言ったんだ。身体の関係でもいいって食い下がるから、抱きたいのも彼女だけだって。ミシェルのプライド傷つけちゃったよ」

ワオ!とジェイデンの動きが止まる。

それもそのはず。彼との付き合いは長いが、自らの、いわゆる恋愛話を俺からしたことがないからだろう。


「俺に内緒で恋人ができたのかい?何年ぶりの恋人だい?俺が知る限り伊織は何年もフリーだったろ?」

「恋人じゃないんだ。まだフリーの記録更新中だよ」

「どういうことだ?伊織ほどのいい男が片想いかい?」


喉元から、ぐ、と何かがせりあがってくるのを感じ、さっき来たばかりのよく冷えたビールを一気に飲んだ。

それでもその感覚は収まる気配がなかった。


「伊織?」

「ちょっと...ごめん、」

涙ぐみそうになり、下唇を噛み締める。それぐらいではストッパーにはならず視界が歪む。


「泣くなよ伊織」

「ごめん、飲みすぎたかな」

「伊織全部吐き出せよ」


俺よりも体格のいいジェイデンにハグされて、その温かさと包容力に涙腺が崩壊した。人前で涙を流すなんて、物心ついてから初めてのことだった。
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