この結婚には愛しかない
「神田さんはホールディングスの人だし、かたやこっちは東京から離れた西日本の本州の端の方。おまけに数ある子会社のひとつ。もう2度と会えないことは分かってるんだけど」

「小泉さん」


長谷川くんの手が私の右手に重なる。温かくて大きくて、骨ばっている男性の手。

優しく重ねられた手から、気持ちが伝わってくるような感覚。


「あの1年間の思い出と、メッセージだけでも繋がってることが今の私の支えになってて、会えもしないのにいつか会えるかもしれないって心のどこかで期待しちゃって、」

「3年もですか?」

「そう...そうなんだよね、もう3年も経つのに」

「俺は小泉さんのそばにいます。俺で忘れません?俺と恋愛してください。俺に愛されてください」

「(長谷川くん...)」

「ホールディングスがこんなになって自分の会社の今後も不透明な時なんで、今すぐ返事をもらおうとは思いません。ただ、俺が小泉さんのことを好きで、俺と幸せになって欲しいと思ってるってことは知っててください。もしいい返事がもらえなくても、会社の先輩後輩の今の関係は変わりませんから」

「ありがとう。月曜からも今まで通り接してくれる?パワハラしない?」


ハハッと笑った長谷川くんが、当たり前じゃないですか。と言い立ち上がり、帰りましょうと、駅へ向かって歩き始めた。
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