この結婚には愛しかない
「俺が誘惑するのは、後にも先にも莉央ただ1人だよ」

「ヤバっ!」

「伊織さんっ!」

伊織さんが笑いながら照れ真っ最中の顔をのぞきこんでくる。両手で顔を隠すと「りーお」と手を外された。


「専務は息を吸うようにイチャつくんすね」

「仕方ないよね。妻がかわいくて無意識だよ」

「マジか...」

短いソファーに1人で座っている長谷川くんが、もう1回マジかと呟いてビールをがぶがぶと一気に飲んだ。


「ところで湊さんはなんの勧誘なんですか?」と話を変えると、湊さんがそれに答えてくれた。

「うちの会社に転職して営業しない?って。今の年収かける1.2は約束するって。ざっくり計算したけど正直揺れたよ」

「前向きに考えてくれたら嬉しい。1.2プラス出来高オンも考えてもいいよ」

「ほらまた誘惑!」

「ははっ勧誘だよ」


伊織さんは営業強化にかなり力を入れられていて、中途採用の面接に自ら参加されたり、ご自分の出張に何人かピックアップして同行させている。

来月にはGGの赤澤営業本部長の第一回目のセミナーを予定していて、営業と管理職は全員参加。一般社員も積極的に受講するようにと神田専務命の通達が流れた。

もちろん私も参加させてもらう予定。
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