この結婚には愛しかない

経営者は孤独だと言われている。

最終決定が自己にある責任、重圧。他の社員に本音を打ち明けるのが難しいなど、孤独はリーダーの職業病とまで言われている。

伊織さんが私の両親に挨拶してくださった言葉にも、それは現れていた。


「伝えたくなっちゃいました。会食も行ってくださいね。私に遠慮して回数制限しないでください。その代わり、一緒にいられるときは伊織さんを独り占めさせてくださいね」

言葉にすると、きゅうう、と胸が締め付けられ、愛しさが溢れてしまう。


「ありがとう。優しくて思いやりのある莉央が愛しくてたまらないよ。俺のためにたくさん考えてくれてるんだね」

伊織さんの頭を撫でて、抱きしめて、会社だからこの気持ちを誤魔化そうとしたけどどんどん膨らんで。

伊織さんがそれに気付かないはずがなく、私を膝の上に乗せ、口づけてくれた。

「ここでもいいんだけど、早く2人の家に帰ろう。また莉央に甘えちゃったから莉央を可愛がりたい。鍋の前にね」

「...もうちょっと、このまま」

「ああ、離れ難いね」


どうか伊織さんが、孤独を抱え込みませんように。

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