この結婚には愛しかない

動かない私を不審に思った長谷川くんが後ろから「小泉さん?」と小さく声をかけてくれ、ハッとした。

下座に2席空席を見つけ、そこに長谷川くんと並んで座った。パソコンを会議室のWiFiに繋ごうとするのだけれど、パスワードを何度もタイプミスしてしまう。


「どうしたんですか?」

長谷川くんに、大丈夫と小さく答えた。

今度は逆隣から大森室長に名を呼ばれ顔を向けた。でも大森室長の視線の先は神田さんで。


「小泉さんのヒーローは、我が社の救世主だ」


鎖骨の奥がぎゅ、と締め付けられる。胸にとめどなく押し寄せる熱。

揺れる視界。


お願いだから零れないでと、前を向いた。
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