この結婚には愛しかない
「お背中流しますね」

「じゃあ俺は莉央を」

「あ、私は結構です」

「ダメだよ」

「だっていお、んーっ」

キスをしながらバスタオルをとっぱらって脱衣所に投げた。

多少強引になったけど、当然楽しく洗い合ったよね。


今日は11月の初めの、なんでもない平日だ。

湯船に浸かって、俺に身体を預けてくれる莉央を後ろからゆるりと抱きしめながら、これはなんのご褒美かと真剣に考えていると、莉央が答えをくれた。


「明日から15日間も会えないから...充電です」

「(え?可愛い可愛い可愛い)」

そうか。結婚してから初めてだ。それだけ離れるのは。


「寂しいの?」

俺からの問いかけに、うん、と頷いてから体を反転して俺の脚の上に乗り向かい合い、首に腕を回し素肌を重ね合わせてくる。

はあ、幸せだ。


「指輪もあるし、連絡も取りあえるし、寂しくないです...って言いたいですけど、もう寂しいです。ごめんなさい。伊織さんは仕事なのにこんなこと言ってしまって」

「ん、ごめんね、寂しい思いさせてるのに嬉しいよ。寂しがってくれて、それを言葉と態度に出してくれて」

「伊織さん...」


耳元で囁かれる、甘えの混じった可愛い声。

莉央はいまだに敬語だし、プライベートでもどうしても上司と部下のようになってしまう場面が無くはないけど、今のように感情を表に出してくれることがかなり増えた。
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