この結婚には愛しかない



「伊織さん。おはようございます。お誕生日おめでとうございます」

「ん、ありがとう」

おめでたい歳じゃないけど、莉央に祝ってもらえる日が来るなんて、この世に生を享けたこと、両親に感謝しかない。

ああ、ごめん違った。“直接”祝ってもらえる。だね。

初めて祝ってもらったのはもちろん出向中で、あの時は仕事終わりに4人で飲みに行ったよね。


「これ3人から」と莉央が渡してくれたプレゼントのボールペン、いまだに大切に使ってるけど気づいてるかな?

上質で手に馴染んですごく書きやすいから、まだまだ使わせてもらうね。


でもね、実はあのボールペンが莉央からのプレゼントだったこと、知ってるんだ。

つい先日、大森室長に「いいボールペンですね」と言われたことがきっかけで話をしたんだけど、どうにも室長と噛み合わなくて。

そうしたら大森室長が思い出したんだ。実は莉央が1人で選んで1人で買いに行ったのに、3人からのプレゼントということにして欲しいと頼まれたことを。


だから俺はこのまま知らないふりをしておくね。いつかバレたら、その時は笑おう。


薄手のニットの上にエプロン姿の莉央をベッドに誘う。

笑顔で布団に潜ってきて「あったかい」と俺にくっついてきて。


今日1日、ずっとここで過ごしたくなる。
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