この結婚には愛しかない
「ああ疲れた」

背もたれに上半身を預け天井を仰ぎ、ダークグレーのネクタイの結び目に人差し指をかけ、グイと緩めた神田専務のその仕草。

ときめかずにいられない。


会えない間の、憧れだったり会いたかったりの想いのメーターを一瞬で振り切るこの感情を、どうカテゴライズしたらいいんだろう。


「お疲れ様です」

辛うじてそう言葉にできたんだけど、本当は抱きしめたい。抱きしめてお疲れ様って労って、全力で癒してあげたい。もしも私で癒しになればの話だけど。


「自社紹介のスライド作ったの小泉さんなんだってね。大森室長が誇らしげに教えてくれた。それと決算分析も。シンプルな色使いで、強弱の表現が見やすくて見てる相手に伝わりやすくてよく出来てた」

「ありがとうございます!」

「3年前はスライド作ったことないんですって言いながらもいいの作ってたけど、格段に良くなってた。がんばったんだね」


胸が熱くなる。

特別なスキルのない私だけど、自分なりに努力した成果を、他の誰でもない、1番認めていただきたかった神田さんに認めていただけた。
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