この結婚には愛しかない

「去年でしたかな。ドイツで専務に偶然お会いした時にいつも専務の隣にいた...ほらあのホールディングスのキレイなアジア人女性」

「ミシェルですか?」

「そうミシェルさん。あの方は恋人ですか?美男美女で非常にお似合いだった」

「違いますよ。でもミシェルには我が社(ここ)に来て欲しいと声をかけています」


私は今どんな顔をしているだろう。なんでもないふりできてるかな。

神田さんが必要とされているミシェルさんという外国人女性。ぐるぐると、不安が渦を巻く。


「本題に入りますが、10年のビジョンを組み立てるのには柱が何本か必要です。その柱を大小の項目に分けていけばビジョンの詳細が描けるでしょう。事業部それぞれの柱を『攻めと守り』に。全社としては『人財育成と意識変革』をプラスしましょう。イメージとしては...」


いけない。ミシェルさんに気を取られてる場合じゃない。こんな大役のメンバーに選んでいただけたんだ。仕事で足を引っ張るわけには行かない。


恋人じゃないとおっしゃった神田さんを信じます。


ただこの日の夜、体も頭も疲れているのにしばらく寝付けなかった。


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