この結婚には愛しかない



記録的に降水量の少なかった梅雨が明ける直前の、珍しくまとまった雨が降り続く夜だった。


【部屋に1人でいるからコーヒーお願いできないかな?】

神田専務から社用スマホに電話でそう依頼があったのは初めてで。


神田専務のスケジュール管理を任されて以来、過密すぎるスケジュールが心配で心配で、頼むから休んで欲しいと度々進言していた。

にも関わらず、分刻みのスケジュールでこなす会議と来客応対、オンライン商談。ひっきりなしにかかってくる電話。連日の関係各所との会食。合間に国内外の出張。


ビジョン10は完成間近。ホールディングスからの独立日も決定し、新たな出発は目前に迫っている。


「長谷川くん。専務にコーヒーお出ししてくる。私ちょうどキリがいい所だったからそのまま帰るね。長谷川くんもキリのいいところで帰ってね」

「あー...分かりました。お疲れ様です」

「お疲れ様。また明日」


何か言いたそうにした長谷川くんだけど、再びノートパソコンに向かった。
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