この結婚には愛しかない
重要来客用の特別なコーヒー豆をミルで挽き、丁寧にお入れした。バッグの中にご褒美用のチョコがあったのを思い出し、それもトレーに乗せ専務室に運んだ。

ノックをしてゆっくりと専務室のドアを開けた。でもパソコンのモニターが僅かに室内を照らしていただけで、室内は照明が消えていた。


「(ご不在かな?もしかして急な呼び出し?)」

一応確認して、ご不在なら出直そうと電気をつけると、ソファーに横になっている神田専務がいらっしゃった。

大きな方のソファーに横たわり、長い足をクロスさせ、片方の腕で両目を隠すようにされている。熟睡されているのか、電気をつけたことにも気付いていないようだ。

神田専務は今日の予定を全て終えられている。このままそっとしておこう。


一旦トレーをセンターテーブルに置いた。そこには無造作に置かれた封筒があった。宛名などは何も書かれていない。

エアコンがよく効いていたため、風邪をひかないようにと、ハンガーに掛けてある神田専務のジャケットをとり、そっと体に掛けた。

なるべく音を立てないように、トレーを持って部屋を出ようとドアに手をかけた時、背後から神田専務の声がした。
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