この結婚には愛しかない

「ごめん寝てた」

神田専務は体を起こしそのままソファーに腰掛け、眩しそうに目を細めた。


「すみませんお休みのところ」

「ううん、呼びつけたのにごめん。コーヒーのいい香りがする」

「ブラックでしたよね」

「うんありがとう」

「私はすぐ退室するのでゆっくりなさってください」

コーヒーカップをお渡ししようと腰をかがめ手を伸ばすと、専務の手が私の手に触れる。びっくりして逃げようとした私の手を優しく捕まえる、男らしい骨ばった大きな手。


「時間平気?」

「...はい。あの...もう仕事終わりました」

「ここ座りなよ」

よかった、と繋いだ手を引かれ、そのままソファーに腰を下ろした。思いのほか神田専務との距離が近く肩が触れる。

触れた手、肩が熱を帯びる。


神田専務がテーブルの上のコーヒーに手を伸ばすと、ソファーの座面が傾き、神田専務にもたれかかってしまい、専務側の足に力を入れ並行を保つ。

「美味しい。小泉さんが入れてくれたからだね」

「よかったです。心を込めました」

「ありがとう」

こんな些細なことでも、神田専務のお役に立てたことが飛び上がりそうなほど嬉しい。
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