この結婚には愛しかない
「俺ね」と神田専務がそのままの体勢でお話を始められる。さすがにいつまでも頭を撫で続けるわけにはいかず、手を膝の上に戻した。

仕事中の圧倒的なオーラを放つ神田専務はもちろんかっこよくて憧れしかないのだけれど、今のように、無防備で穏やかな空気に包まれていてもかっこいいのには変わりがなくて。

ますます『好き』が大きく深くなる。

あのハグの日以来の2人きりの時間。本当に、このまま時が止まればいいのに。


「カッコつけて食事って言ったけど、本当はご飯がいい」

「ご飯、ですか?」

食事とご飯は同義語では?と思った私は、神田専務の次の言葉を待つ。


「家庭料理って言うのかな。子供の頃祖父母の家で食べたような温かい素朴なご飯。最近会食続きだから」

「会食ってどんなお料理なんですか?」

「和洋中なんでも。立食もあれば持ち帰り前提の膳もある。アルコールも出たり出なかったり。共通してるのは仕事ってこと。でも今は積極的に参加するべきだから」

「会食の回数減らせないんですか?」

「行きたくないけど、生まれ変わろうとしてるうちの会社を対外的にアピールして、俺という人間の認知度を上げなきゃいけないからね」


『飲みニケーション』は時代にそぐわないと言われるけれど、人との距離が格段に近づく。仕事をする上で、人脈はすごく大事だ。
< 50 / 348 >

この作品をシェア

pagetop