この結婚には愛しかない
腕の力を緩め神田さんの顔を見上げる。

どうしたの?と、その優しい表情が語りかけてくださる。

私は神田さんの瞳をしっかり見つめた。


「神田さん。私と結婚してくださいませんか?」


神田さんの形のいい唇から、え?と小さい声が漏れる。


「本当に入籍していただかなくても構いません。専務がご結婚されたことが周知の事実と認知されれば。そうすればもう社長から結婚を勧められないですよね?仕事を集中できますよね?ご希望なら、契約書を作成して、契約に沿った契約婚でも構いません。それで少しでも神田さんのお役に立てたら」

「小泉さん、ごめんちょっと待って」

「ただ、一緒に暮らしていただきたいです。会食のない日は神田さんにご飯を作って差し上げたいです。お昼のお弁当も。それから、一緒にお酒を飲んで、たくさんお話していっぱい笑っていただきたいです。毎日ハグして、少しでも神田さんの疲れを癒してリラックスしていただきたいです。朝起きたらおはようって笑って、夜眠りにつく前に1日の出来事を報告しあって、おやすみって言いたいです。少しでも神田さんの力になりたいです」


感情が込み上げ、言葉の端々が揺れてしまう中、ゆっくり、しっかり、言葉にした。


「神田さんは、私たち社員とその家族を守ってくださるとおっしゃいました。私はただ1人、神田さんをお守りしたいです」
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