溺愛執事は貧乏お嬢様を守り抜く
彼の部屋は私の部屋からは遠かったけど、しょっちゅう会いに行っていた。


『紫音くん、あそぼー』


『やだよ、わかばは遅いしすぐに転ぶし。
おまえに怪我でもされたら後で俺が怒られるんだからな』


優美な見た目に反して彼はやんちゃざかりな男子。


私の顔を見るとめんどくさそうな顔をして、部屋の窓から庭へと飛び出して。


そのまま走って逃げ出してしまう。


でも、無邪気な私はお構い無しに彼を追いかける。


「逃げないでっ」


「お嬢様のお守りなんてやってられっかよ」


足の速い彼はどんなに一生懸命に走って追いかけても、距離を詰めれなくて。


『紫音くーん、待ってよぅ』


半べそをかきながらお願いするけど。


『もう、勘弁しろよっ』


諦めの悪い私を見て彼はすっかり呆れ顔。


『きゃあっ』


案の定、私はすぐに転んでしまって。

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