溺愛執事は貧乏お嬢様を守り抜く
『うわーん、痛いよ』


『あーあ』


擦りむいた膝小僧が痛くて、泣き叫ぶのはしょっちゅうで。


でもね、結局はいつも……。


『ううっ……』


『……』


しばらく待っても自力で起き上がれない私に声をかけてくれる。


『おーいわかば、大丈夫か?』


やれやれ仕方がないなって感じで、こっちへ走って戻ってくれる彼。


『ううっ、痛い』


『おまえ、ほんとに鈍臭いな。
お嬢様ってみんなこんなんなのかな』


『痛いよー』


『ほんっと泣き虫だな、若葉は』  


なんと言われようと平気。


いつのまにか涙は止まっていた。


『ほら、つかまって』


だって、彼がとっても優しい男の子だって知ってるから。


いつものようにスッと伸ばされる手に、安堵する。


『わかばは、弱っちいな。
ほら泣きやめよ。怪我の手当てしてから家の中で遊んでやるから』

< 84 / 341 >

この作品をシェア

pagetop