元奴隷の悪役令嬢は完璧お兄様に溺愛される

 ヘンリエッタの手がレインの腕をぐい、と引く。すぐ横には階段。落とされる、と思って、レインはもがいた。

「は、はなして……ッ!」

 レインが、落とされまい、と身をよじった時だった。

「きゃあああああ!!」

 突然、ヘンリエッタが悲鳴のような大声を上げた。
 狂気的なまなざしが、レインを追いかけて、レインの一呼吸をも見落とさぬようにとでもいうように見つめている。その突然のヘンリエッタの悲鳴にレインが何を反応するより早く、ヘンリエッタが床を蹴った。
 ズダダダダン!!と大きな音がして、ヘンリエッタが階段を転がり落ちていく。

 まばらだった人の気配が集まってきて、めいめいの目が落ちて気絶したヘンリエッタと、階段の上にいるレインを見つめている。

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