誰も知らないもうひとつのシンデレラストーリー
物語は進み、村を偶然訪れた王子様から、求婚をされるシーン。


「俺の、妻になれ。」


偉そうな、自由気ままな王子様。

それは、王子そのものに見えて、私はほとんどありのままの自分の気持ちで、その求婚を断る。


「私は、ただの村娘です。あなたには釣り合わない。どうか、おやめください」


王子は、諦めないと伝え、壇上からはけていった。


そして、次のシーン。


優しく、村の為に過ごしていた少女は、王子に求婚されたことで、村のあぶれ者となってしまう。


「もうその顔を見せるな!!」


私達小道具係が新聞紙をふわふわに包んで作った石のような小物をたくさん投げつけられ、痛くはないけど、私は悲しくなる。


「どうして、私が、何をしたって言うの…?」


王子様だって、どうして私なんかに求婚なんて。

みんなが否定するのなんて分かってたはずなのに。

そんな王子様に対しての不満が募る中、張本人の王子様が助けに現れる。


「貴様ら、恥ずかしくないのか?私が勝手にした事だ。娘は悪くない。

だが、こんな村においてはおけん。行こう」


手を引き、舞台袖へと連れて行ってくれた皇輝。


その後ろ姿に、私はついていきたいと本心で思っていた。


釣り合わないことは分かっている。

だけど、この手に、この後ろ姿についていったら、もしかしたら幸せになれるんじゃないだろうか。


舞台袖でぼんやりと手を握ったままの私を、

次のシーンがある王子は、優しくなでて、そっと手を離し、再び壇上へと戻っていった。
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