【完】クズな彼の危険すぎる偏愛から逃げられない
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その夜。
藍くんがシャワーを浴びている間、わたしはリビングに二組の布団を敷いていた。
いつかお母さんが帰ってきた時のために。
そんな未練がましい思いでしまっておいた布団が、まさかこんなふうに役に立つなんて。
そしていざ布団を並べると、自分から頼んだとはいえ、藍くんと同じ部屋で寝るという状況に急に緊張してきた。
狭い部屋だから、布団を二組敷くとなるとどうしてもくっついちゃう。
わたしが言い出したことだけど、とんでもないことをしでかしちゃったのかもと、今になってその実感に襲われる。
でも今日はこの部屋を覆う静けさに耐えられない気がして……。
今も、お風呂場から聞こえてくる藍くんのシャワー音に助けられているのは、紛れもなく事実だった。
ひとりだったら今頃、わたしはお母さんの記憶と襲いかけられた恐怖で、うなされていたかもしれない。