【完】クズな彼の危険すぎる偏愛から逃げられない
「出たぞ」
そうこうしているうちに藍くんがシャワールームから出てきた。
藍くんには、たんすの中に眠っていた大きめサイズのスウェットを着てもらった。
サイズは大丈夫だろうかと心配していたけれど、さすが藍くんは着こなしている。
「お、お疲れ……」
わたしは思わずかちかちになって、布団の上に正座をしてしまう。
もう無心で過ごすしかない。
緊張を振り払うように、膝の上でぎゅうっと拳を握りしめる。
「じゃ、寝るか」
「う、うん」
と、藍くんがなにか面白いものでも見つけたようにその瞳を細め、ふっと唇を持ち上げた。
「なに、今更意識してんの?」
藍くんは、わたしが懸命に隠した動揺を見逃してはくれない。
こちらに近づいてきたかと思うと、わたしに覆いかぶさるようにして布団に手をついて屈んだ。
その距離は、鼻先と鼻先が触れそうなほど近い。
怖いほど綺麗な顔が急に間近に迫り、息を呑む。
彼の髪がさらりと揺れるたびに、わたしと同じシャンプーの匂いが漂い、それがさらにどきどきを加速させる。