【完】クズな彼の危険すぎる偏愛から逃げられない

お母さんは高校を卒業してすぐ、未婚でわたしを産んだ。

だからお父さんの顔は知らないけれど、お母さんとのふたりの生活はささやかながら満ち足りていてじゅうぶんすぎるくらい幸せだった。


けれどわたしが10歳の時。

突然、お母さんは出会ってしまったのだ、運命の番に。

お母さんはわたしと同じく"特別体質"だった。


わたしに泣きながら謝るお母さんの顔は、今でもよく覚えている。

笑顔はうまく思い出せないのに、なんで泣き顔だけはクリアに覚えているんだろう。


『ごめんね、由瑠……。彼が子どもは引き取れないって……。本当にごめんね……』


お母さんはわたしよりも運命の番を選んだ。

一度番になった相手とは永遠に離れることができない。

そんな"特別体質"の呪いのような習性が、わたしとお母さんを引き離したんだ。
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