The previous night of the world revolution8~F.D.~
「…お?何だ?アイ公、取り込み中か?」

首を傾げるアリューシャ。

…どうやら、取り込み中のようですね。

「ちょっと意味が分からないんだけど。いきなり何なの?…いや、だからそんなこと突然言われても、知らないよ」

アイズの声が、非常に刺々しい。

アイズがそんな声を出すなんて、珍しい。

取引先からの電話…という訳じゃなさそうですね。

もしそうなら、もっと丁寧な言葉遣いをするはずだ。

「…いいや。本人には代わらない。スピーカーフォンにするなら良いよ」

と言って、スマホの画面をタップしてスピーカーフォンにし。

人生ゲームをしていた、テーブルの真ん中に置いた。

誰からの電話だ、と聞く必要はなかった。

『ルレイア、そこにいるのか?』

電話から聞こえてきたのは、あの忌々しい男。

帝国騎士団団長、オルタンスの声であった。

…電話切ってやれ。うぜぇ。

あいつがアイズに、一体何の用だ?

いや、今俺の名前呼んでたよな?

「…何ですか。キモいから俺を呼ばないでもらえますか」

『この声は…ルレイアだな。良かった』

何が良かったんだよ。

『実はルレイアに用があったんだが、いくらルレイアに電話しても、出てもらえなくてな』

「当たり前ですよ。だってあなたの番号着信拒否設定してますから」

『成程』

オルタンスから電話かかってきたら、キモいじゃないですか。

一日の気分が台無しになってしまうから、オルタンスからの電話、メールは全部拒否している。

で、代わりにアイズに電話して、俺に繋いでもらおうとした訳ですか。

やっぱりキモいな。

『話したくないところ済まないが、俺はどうしてもルレイアに話さなければならないことがあってな』

「何ですか」

『昨夜起きた殺人事件について、ルレイアに任意聴取させて欲しい』

「…」

俺は、さして驚かなかった。先程、先に事情を聞いていたアイズも驚かなかった。

そして、何を聞いても大抵驚かないルリシヤとルーチェスも平然としていた。

しかし、ルルシー、シュノさん、アリューシャの三人は、目を真ん丸にしていた。

「任意…聴取?それはどういうことだよ…?ルレイアが何したって言うんだ?」

電話越しに、オルタンスに掴みかからんばかりのルルシー。

だが、オルタンスは淡々としていた。

『何かしたとは言ってない。ただ、参考人として話を聞かせて欲しいだけだ』

「参考人だと…?どういう意味だ?」

『参考人は参考人だ。それ以上でもそれ以下でもない』

…ムカつく言い方ですよ。

そういう煮え切らないのが一番ウザい。

「…ふざけるなよ。お前の言うことなんて、聞き入れるはずがないだろうが」

ルルシーは、そう一刀両断した。

「『任意』聴取って言うなら、断るのは自由なんだよな?」

『勿論だ。強制力はない』

「だったらお断りだ。誰が好き好んで、お前のところになんか行くか」

わーお。ルルシーったら大胆。

いつもイケメンですけど、こういうときは尚更イケメンですね。

このルルシーの格好良いところ、電話の向こうのオルタンスにも見せてやりたい…けど。

あんな奴に見せるのは勿体ないから、やっぱり見せてやらない。
< 306 / 522 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop