The previous night of the world revolution8~F.D.~
ルルシーがイケメンなのは、俺にとっては大変嬉しいことなのだけど。

『悪いが、俺はお前には聞いてない』

オルタンスは、あっさりとルルシーの意見を跳ね除けた。

…まぁ、そうですね。

「ぐっ…」

これには、ルルシーもぐぬぬで引き下がるしかない。

『それに…脅したくはないが、任意聴取を断ったら、後々立場が悪くなることになる可能性がある』

…脅したくないとか言いながら、ばっちり脅してきてるじゃないですか。

「つまり、黙って今のうちに言うこと聞いとけ、ってことでしょう?」

『そう受け取ってもらって構わない』

何を偉そうに。キモい。

わざわざ電話してきた時点で、何かあるとは思ってたが…。

「昨夜起きた殺人事件、ってのは何の話ですか」

『それは聴取に応じてもらってから話す』

今言えよ。クソが。

何のことか知らないが…。身に覚えがない。

仮に俺が殺人事件を起こしたとして、それを帝国騎士団に嗅ぎつけられるとでも?

「何よ、それ…!事情も話さないでルレイアに出頭しろって言うの?そんなの勝手よ!」

「そーだそーだ!アリューシャ達はな、今超忙しいんだぞ!人生やってるからな!」

シュノさんは電話越しにいきり立ち、アリューシャも追撃。

『…人生?』

残念ながら、オルタンスには通じていないようだ。

人生ゲームが分からないとは。つまんない人生ですね。

「…ふむ。身に覚えがないなら、いっそ素直に出頭して、潔白を証明してきたらどうだ?」

ルリシヤが、冷静にそう提案した。

…うん。あなたならそう言うと思いました。

更に。

「任意聴取、任意同行って、実質強制みたいなものですからね。断ったら後で立場が悪くなるかもしれない、というのは本当ですよ」

あくまで、ルーチェスも冷静。

…そして、俺も同感です。

「そんな…!ルレイアを帝国騎士団に引渡せって言うの!?」

「落ち着けシュノ先輩。これはあくまで任意だ。逮捕しようって訳じゃない」

「そ、それはそうだけど…」

「それとも、ルレイア師匠の無実を信用してないんですか?」

「…!」

これには、シュノさんも一瞬固まった。

しかし。

「そんな訳ないじゃない…。私はルレイアを信じてるわ。誰よりも、ルレイアを信じてるわ」

「…ありがとうございます。シュノさん」

そう言っていただけるだけで、充分ですよ。

何があったのか知らないが、俺が出ていって解決することなら。

帝国騎士団に煩わされるくらいなら、こっちから出向いてやりますよ。

俺に落ち度はないのだから、堂々としていれば良い。

「…良いですよ。何企んでるのか知りませんが、あなた方に付きまとわれるのは御免ですからね。行ってやりますよ」

『分かった。…迎えの車を寄越そう』

「要りませんよ。行くならこっちから行きます」

堂々と。真正面からね。

こっちは、何も隠さなきゃいけないことはないんだから。

「精々、首洗って待ってるんですね」

そう言って、通話ボタンをぶちっと切った。

これがアイズのスマホじゃなかったら、今すぐ通話記録を消去して、再度着信拒否してやったところですよ。
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