The previous night of the world revolution8~F.D.~
「どういう…意味だ?ルレイア…」

「…ルルシー…」

こんなことは言うべきじゃない。

これは俺の身勝手であって、ルルシーには関係のないことだから。

それでも…それでも、俺は、どうしても。

他の…仲間達とは、笑顔で別れることが出来ても。

ルルシーとは、どうしても出来なかった。

それは俺の心の弱さであって、未熟さだ。

だから、ルルシーは遠慮なく断れば良い。

これ以上俺の罪に付き合う義理はないと、俺を突き放せば良い。

そうしてくれれば、きっと俺も楽になれるから。

「…お願いがあるんです」

「…何だよ?」

こんなことは言うべきじゃない。

…こんなことは言うべきじゃない、って。

分かってるはずなのに、言わずにはいられなかった。

「大切な話なので…最後まで、落ち着いて聞いてください」

「…あぁ」

俺は、一つ大きく深呼吸をした。

そして、言った。

帝国騎士団から帰ってる時、ミルクティーを飲みながら。

帰ってきた後、人生ゲームのルーレットを回しながら。

今に至るまで、ずっと考えてきたことを。

「…俺、逃げようと思うんです。殺人犯として捕まって…アイズや…シュノさんや…『青薔薇連合会』の皆に、迷惑をかけてしまう前に」

「…」

「多分…俺が殺人犯として指名手配されるのは、時間の問題でしょう。あれだけ証拠が揃っていたら…正直、もう無理です」

今から、急いで真犯人を見つけようとしても。

その前に、俺が犯人として捕まる方が先だろう。

帝国騎士団はこれまで、幾度となく『青薔薇連合会』に借りを作ってきた。

だから、普段は俺達が少々やらかしても、目を瞑ってなかったことにしてくれている。

でも…今回の事件は、目を瞑るにはあまりに大き過ぎる。

貴族の当主、それも上級貴族のサイネリア家が関わってるとなれば…。帝国騎士団側だって、見過ごす訳にはいかない。

俺は遠からず捕まるし、その過程で、『青薔薇連合会』の他の罪も暴かれるだろう。

アイズの言う通り、俺達は自慢じゃないけど、叩けばいくらでも埃が出ますからね。

どれも、闇に生きてきた代償として、必要不可欠な罪だった。

だけど、罪は罪だし、罪なら裁かれなければならない。

今日はまだ重要参考人扱いだけど、明日には、いや、あと一分後には、容疑者になってるかもしれない。

今にも、正式に容疑者となった俺を連行する為に、オルタンス達がここに踏み込んでくるかもしれない。

いつそうなってもおかしくない。

そして、そうなった時、『青薔薇連合会』が被る実害を考えたら…。

組織を生かす為に、傷んだ果実である俺は、箱の中から出ていかなければならない。

愛する全ての人々を…家族を、守る為に。

そして勿論、ルルシーも、俺の守りたい家族の一人だ。

だから俺は、彼らに迷惑をかける前に、一人でこの国を出ていかなければならない…。

…けれど、俺には、どうしてもそれが出来なかった。

俺の心の弱さが、それを許してくれなかった。

出ていくのは構わない。仕方ないことだ。

だけど、一人は嫌だ。

…もう二度と、俺は一人になりたくなかった。





「俺と…一緒に、来てくれませんか」

「分かった」

「…え」

あまりにあっさり即答されたから、俺は意表を突かれてしまった。
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