The previous night of the world revolution8~F.D.~
全く、意表を突いたことをしてくれるじゃないですか。

「ご、ごめんなさい、ルナニアさん…。勝手なことをして…。お、怒ってます…わよ、ね?」

「…いえ…別に…」

怒ってはないですよ。

ただ、やってくれたなと思ってるだけで。

今ここにルルシーがいたら、怒りに任せてマリーフィアを手に掛けていたかもしれない。

「わたくし…どうしても、あなたのことを知りたかったんですの…。だから…ごめんなさい…」

「私、あなたのこともっとよく知りたかったの」とか言いながら、調査会社に素性を調べさせるとは。

ただのメンヘラ女じゃないですか。

…さて、これからどう動いたものかな。

「ほ…本当なんですの?ルナニアさん…貴族だったって…」

「えぇ…。…まぁ、そうだったこともありますね」

今更否定しても仕方ないので、潔く認める。

「そうですの…。やっぱり…。最初に会った時から、一般人には見えないって…ずっと思ってましたの」

「…」

「だから…ルナニアさんが元々ウィスタリア家の方だったと知って…凄く、納得してしまったんですの。やっぱり、そうだったんだって…」

…ふーん。

一応、腐っても上級貴族のお嬢様って訳か。

最低限、人を見る目はあるらしい。

「でも…どうしてウィスタリア家の嫡子が、一般人になって…。しかも、その…裏社会の方とも関わりがあるって…」

「…」

「どうして…そんなことになってしまったんですの?」

…マリーフィアの雇った調査会社とやらは、俺が帝国騎士団をやめ、『青薔薇連合会』に入るきっかけとなったあの事件…。

…あの事件については、調べが及ばなかったらしい。

当然だ。あの事件の詳細は、帝国騎士団が情報統制をしている。

いくら有能な調査会社でも、易々と入り込むことは出来ない。

真実を知るのは、当事者である俺と、俺の仲間達。

それから、忌々しい帝国騎士団の連中だけだ。

マリーフィアは、俺がマフィアに入った経緯を知らない。

ならば、まだやりようはある。

俺は素早く頭を回転させ、自分がこれからどう立ち回るのかを決めた。

「…他に、どうすることも出来なかったんです」

俺は、わざとらしい悲壮な顔で答えた。
< 58 / 522 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop