The previous night of the world revolution8~F.D.~
「俺は…俺は、あなたに相応しくありませんよ」

「そんなことありませんわ…。…それとも、ルナニアさんは、わたくしのことがお嫌いなのですか?」

不安そうな顔で尋ねるマリーフィア。

はい、と言いたいのを必死に我慢。

「まさか…!むしろ、ずっと…あなたが好きだからこそ…あなたを思ってるからこそ…本当のことが言えなくて…」

我ながら、名俳優。

仮にマフィアをやめても、俳優としてやっていけそうな気がする。

まぁ、マフィアをやめるくらいなら人生をやめますけどね。俺は。

「俺は…あなたに相応しい身分では…」

「…相応しいだとか、相応しくないだとか、そんなことは言わないでくださいな。大切なのは、わたくし達の思いが通じ合っていること…。そうではなくて?」

「…マリーフィアさん…」

…何言ってんですか?あなた。

アリューシャ辺りが見てたら爆笑してたでしょうね。

「そんなに家柄が気になるのなら…。そうだっ、あなたをウィスタリア家に戻すよう、わたくしから口添えしますわ」

は?

「あなたは不等に貴族権を奪われたんですもの。復活させて、ウィスタリア家に戻って、それから改めて、わたくしのもとに…カミーリア家に婿入りすれば良いのですわ。そうすれば、全て丸く収まりますもの」

勝手に一人決めにして、勝手に一人で納得している。

どうしたらそういう発想になるのか、という超理論を展開している。

だが、こういう時こそ冷静にならなければならない。

どんな状況に転んでも、常に最善の判断を下せるように。

「わたくし達の未来の為に、そうすべきだと思いますわ。ね、お願いします…」

「…マリーフィアさん…」

感動的な表情を浮かべながらも、俺の頭の中は、凄まじい勢いで回転していた。

今この時、どう答えるべきか。

…ルルシーがいたら、きっと選択の余地はなかったでしょうね。

「ふざけるな!」と一喝して、それで終わりだったろう。

でも、俺は…。

ウィスタリア家に…戻りたくなんかない。それは当然のことだ。

それに…結婚なんて、もっととんでもない。俺には既に、本命のフィアンセがいるのだから。

しかし、もし今、このマリーフィアの提案を呑めば、全てが丸く収まる。

俺はカミーリア家に合法的に入り込める。安全に、『ローズ・ブルーダイヤ』をカミーリア家の宝物庫に返すことが出来る。

そして、それだけが現状、唯一『青薔薇連合会』に何の被害ももたらさずに、事を解決する方法だった。

…ならば、もっての機会と捉えよう。

乗るしかない。このビックウェーブに。ってね。

「…分かりました。あなたがそこまで言ってくださるなら」

俺は、マリーフィアの手をぎゅっと握り返した。

「俺の運命を、あなたの手に委ねます」

「ルナニアさん…。…ありがとうございます」

…こうして。

何とも情熱的な展開で、俺とマリーフィア・ユール・カミーリアとの婚約が成立した。
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