嘘に恋するシンデレラ

 ほとんど声にならない呟きが(くう)に吸い込まれる。
 掠れて震えた。

「そもそも、この写真って……いつの? 」

 そんなわたしの言葉を聞いた瞬間、隼人が彼の手からスマホを奪った。

「半年前じゃん」

 形勢逆転だと言わんばかりに、星野くんに歩み寄った彼はせせら笑う。

「なるほどな。“ストーカー”はおまえだったわけだ」

「…………」

「それで? こんな写真でこころを騙して、俺を悪者に仕立て上げて奪うつもりだったのかよ。俺たちの関係ぶち壊しやがって」

 目を落としたまま何も答えない星野くんを見て愕然(がくぜん)とする。

 あのタイミングで、この瞬間だけを切り取った写真を見せられたせいで、すっかり騙されていた。

「星野くん……」

 わたしはそれでも(すが)るように彼を見つめてしまう。
 あの優しさが、想いが、愛が、まやかしだったなんて思いたくない。信じたくない。

「ねぇ、何か言って────」

「あーあ、バレちゃった」

 くすりと笑った彼は、隼人の手からスマホを取り返した。
 冷めた表情で写真を眺め「惜しかったなぁ」と呟く。

「え?」

 スマホをポケットにしまうと、あのとろけるほど甘い笑顔をたたえてわたしに向き直った。

「最初にきみの頭を殴ったのも、突き落としたのも僕だよ。もちろん、この間のも僕がやった」

 怯みもせず、悪びれもせず、恍惚(こうこつ)とした様子であっさりと白状する。
 完全に開き直った態度だった。

「どうして……?」

 喉に詰まりかけた声をどうにか押し出した。

 この()に及んで、わたしのためだなんて曖昧(あいまい)な答えはないだろう。

「うっとうしかったんだもん、きみ」

 一瞬、わたしを指しているのかと思ったけれど、彼の冷ややかな目は隼人を捉えていた。

「俺……?」

 どこかほうけていた彼は、それを受けて困惑を滲ませる。
 なのに、どうして手をかけた相手が隼人ではなくわたしだったんだろう。

「関係を壊したのは僕じゃなくてきみ自身でしょ? 自業自得でこころに愛想尽かされたくせに、いつまでも執着してさ。……それでもこころは優しいから、自分のせいだから仕方ない、なんて言って」

 彼の声から(きょう)がるような色が()げ落ちる。

「だから僕がどうにかするしかなかった」
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