嘘に恋するシンデレラ

「それに、わたししかいないって言うけどそれはちがう。隼人はただ、自分の思い通りに従わせられる都合のいい存在が欲しかっただけ。わたしを利用してたんだよ」

 どこか怯んだ様子を見せていた彼が、はっと目を見張った。
 自覚があったのかなかったのか、いまとなってはどちらでもよかった。

 自然と微笑みかけながら、もう一度背を向ける。

「いままでありがとう、愛沢くん」



 校舎内へ戻ると、階段を駆け上がっていった。
 まだ、()と話さなきゃならないことがある。

 屋上へ出ると、案の定そこに星野くんの姿があった。
 どこかほっとしながら歩み寄っていく。

「嘘つき」

 そう言うと、振り向いた彼がわたしを認めて驚いた表情をたたえる。

「こころ、どうして……」

「嘘だったんでしょ。ぜんぶ自分がやった、なんて」

 星野くんの瞳が揺らいだ。

「最初はともかく、2回目にわたしを突き落としたのは隼人だったと思うし。そもそも星野くんが仕返しのためにそんなことするなんて思えない。そんな人じゃないって分かるから」

「でも、僕は……」

「いいの、もう嘘はいらない。わたし、ぜんぶ思い出した」

 弾かれたように顔を上げた彼に笑いかける。
 つい先ほど、隼人とのことが蘇ってきたときに何もかも思い出したのだ。

 星野くんがわたしの頭を殴って、階段から突き落としたのは事実。
 その動機も彼が語った通り。

 だけど、それはわたしも“共犯”だった。

『協力して欲しいの。ちゃんと、隼人と別れられるように』

 きっかけはそんなわたしの申し出で、彼と話し合って計画を立てた。

 ふたりで近場を歩いていたある夜、砂利敷きの駐車場を通りかかって足を止める。
 ふと思い立って大きめの石を拾い上げた。

『これで、わたしの頭殴って』

『え……!?』

 驚愕と動揺をあらわにした彼はすぐに首を横に振る。

『冗談だよね? そんなこと僕にできるわけない』

『でも、星野くんにしか頼めないことなの。お願い……』

 つけ焼き()的なその場しのぎは通用しないように思えた。
 リアルな、というか本物の傷じゃないと不足。

 星野くんは石を受け取ったものの煮え切らない態度だった。
 その表情は、明確な拒絶を示している。

 だけど、無理だとか嫌だとか、そういう言葉を二度口にすることはなかった。
 石とわたしの間でしばらく視線を行き来させ、やがて強く握る。

 覚悟を決めたか諦めたか、いずれにしても割り切ってくれたみたい。

『いくよ……?』
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