余命1年半。かりそめ花嫁はじめます~初恋の天才外科医に救われて世界一の愛され妻になるまで~
 さっそく診察室に案内されたふたりと一緒に、また緊張が舞い戻ってくるのを感じながら私も椅子に座った。柏先生は「いいですか。これは確かな診断ではなく、あくまで所見ですからね」と前置きして説明を始める。

「MRI画像のここ、白いもやの境目がはっきりしていないでしょう。これは浸潤性といって、脳内に沁み込むように成長していることを表すんです。この特徴的な映り方からして、おそらくグリオーマかな」
「グリオーマ……それは良性なんですか?」

 母が望みを賭けたような面持ちで問いかけ、私と楓も息を呑む。先生はひと呼吸置いて口を開く。

「残念ながら、悪性の部類に入ります」

 ……目の前が暗くなるような、全身から力が抜けるような感覚に陥る。

 なんとなく悪いんじゃないかという気はしていた。でも実際に告げられると、やっぱり衝撃は大きい。

 母は「そんな……」とか細い声を漏らして口元に手を当て、楓も言葉を失くしていた。

 柏先生は当然ながら冷静に私たちを見つめ、「ですが」と言葉を繋げる。

 ガンは進行度をステージで表すが、脳腫瘍の悪性度はグレードというもので分類され、それが低ければ予後は比較的いいとされている。これは実際に手術をして、取り除いた腫瘍を病理検査してみなければわからないと説明してくれた。

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