余命1年半。かりそめ花嫁はじめます~初恋の天才外科医に救われて世界一の愛され妻になるまで~
 しばしの沈黙の後、楓が好きな洋楽が控えめに流れる中、彼が真面目な調子になって切り出す。

「ねえ、白藍に行きたくないのって夏生さんがいるから?」

 核心を突かれ、やっぱり見抜かれてたかと苦笑を漏らし「うん」と頷いた。眉根を寄せた楓がミラーに映る。

「そんなワガママ言ってる場合じゃねーだろ! 白藍には柏のじっちゃんの名に懸けてやってる脳外科医がいるってのに」
「それじゃどこかの名探偵になっちゃうよ」

 無自覚にボケる弟のおかげで、普通に笑ってしまった。柏先生が言っていた若いのに優秀な子というのは、たぶん夏くんのことじゃないかなと推測しているけれど。

 悶々としている楓にも納得してもらいたいので、先ほど聞いた話をもう一度する。

「白藍で手術できたとしても、障害が残るリスクもあるし、全摘できるお医者さんはいないだろうって言ってたでしょ。別の病院に行ったとしても、きっと余命はたいして変わらないよ」

 自分で言っていて少々虚しくなり、再び気持ちが落ちていく。楓は黙り込み、母も俯きがちになっていた。

< 115 / 228 >

この作品をシェア

pagetop