余命1年半。かりそめ花嫁はじめます~初恋の天才外科医に救われて世界一の愛され妻になるまで~

 その日の晩はまったく眠れそうになく、スマホでグリオーマという悪性脳腫瘍について調べていた。どのサイトにもいいことは書いておらず、落ち込むだけだとわかっているのに調べてしまう。

 深く息を吐き出してベッドにスマホを伏せた時、ピコンと音がしてメッセージが届いた。もう一度画面を見てみると、夏くんのアイコンが表示されている。

【七夕はいつも天乃を思い出す。願い事した?】
「そっか、今日は七夕だっけ……」

 それどころじゃなくてすっかり頭から抜けていた。でも、夏くんは私のことを考えてくれていたようで嬉しい。

 ドライブが好きな両親は、付き合っていた頃はよく景色のいい場所へ行っていたらしい。そこで見た天の川と、紅葉が綺麗で印象に残っているからという理由で、私は天乃、弟は楓と名付けたのだそう。

 父は『お前たちにも見せてやるからな』と意気込んで、幼い私たちも連れていってくれた。正直、綺麗な景色はうっすらとしか覚えていないのだが、車の中で騒いで楽しかった道中のほうが記憶に残っている。

 鼻の奥がツンとする。家族と過ごした平和な日々を思い出すだけで涙が込み上げてくるなんて重症だ。

 私の願い事は、これからも皆と一緒にいることだよ。くだらないことで笑って、自由にどこへでも行って、十年後もその先も、こうやって夏くんと繋がっていたい。

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