電話越しで副社長に恋をしました。

『湯元さんって、可愛いですね。早く会いたいです。会って色んな話をしてみたいです』
優しい声が聞こえてきて、耳が溶けてしまうのではないかと思った。
私も会って話したいと思うけれど、この気持ちは何なのだろう……。
電話のやり取りだけで、こんなにも胸がドキドキしてしまうなんておかしいのかもしれない。
「私の顔とか知らないじゃないですか。ブスですよ、とっても!」
『知ってますよ』
あ、そっか。
役職者は社内共有ファイルにパスワードを入れると履歴書とか、個人情報を確認できる。
契約社員の私には権限が与えられていない。
「私は副社長の顔がわかりません。ちょっと不公平ですね」
どんな人なのか、顔を見たい。
『……僕のことって覚えてませんよね』
「たしか入社式の時は、副社長は海外出張でしたのでお会いしていないかと思います……」
『さすがに声だけでは覚えてませんよね。いや、いいです。大丈夫です。お会いできるのを楽しみにしています』
そう言って電話が切れた。
どう考えても副社長に会った記憶は思い出せない。
いよいよ、素敵な声の副社長にお会いできるのだと思って、ドキドキするが楽しみだった。
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