最強退鬼師の寵愛花嫁
(この件に関しては詩さんに訊いてみましょう。今わたしについてくれているのは詩さんと涙子さんですが、格としては詩さんが上……年齢が近いからと涙子さんを頼っては、二人の間に問題を残してしまうかもしれませんし、涙子さんを板挟みのようにはしたくありません)
琴理が親しみやすいからと気軽に涙子を頼ってしまって、もしそれが他言できないことに発展したら……涙子が抱える問題が増えるだけでなく、涙子の上司である詩がそれを把握していないとなると涙子の責任と詩の責任、双方が発生してしまう。
そのとき、ドアがノックされた。
「琴理様、よろしいでしょうか。お食事の準備が整いました」
涙子の声が聞えたので、琴理はそっと椅子から立ち上がった。
「今行きます」
教材をしまって、ドアまで歩く。
クマはふよふよと浮きながら羽ばたかずについてきた。
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「琴理、淋里兄さんが学校まで行ったんだって?」
食卓についた途端、帰ったばかりの心護にそう言われて琴理は心臓が止まるかと思った。
「え、な、なぜ……」
心護は帰るなり食堂に直行してきたようで、制服のネクタイをゆるめながら険しい顔で話す。
「琴理の学校にはうちと親交がある家の者もいるんだ。宮旭日の者ではないから完全な味方とは言えないんだけど……琴理が俺の許嫁だってことは知られているから、今回はそういう家の教師をやっている者から俺に連絡があった」
「………」
(ど、どうしましょう……心護様の方から訊いてくるのは想定外でした……。これは淋里様の言っていた『話したら駄目』に該当するのですか……?)
考えに落ちて下を見る琴理から何か感じたのか、心護は「琴理」と呼びかけた。
「淋里兄さんのことだから琴理の発言にもなんか因縁つけたんだろう。口にしなくていい、肯くか首を横に振るかで答えてくれ。――琴理を傷つけることを淋里兄さんがしたのか?」
「………」
琴理は少し考えてから首を横に振った。
直接琴理を害することを言われたりされたわけではない。
「じゃあ……俺のことで何か言われた?」