最強退鬼師の寵愛花嫁
「………」
それにも首を横に振る。
淋里から言われたのは琴理についている『よくないもの』――クマのことだけだった。
「……琴理は淋里兄さんから何かを言われて、悩んでる?」
「………」
琴理は少し置いてから、こくりと頷いた。
何故淋里がクマのことに気づいたのか、心護も祓えないと言ったものを何故淋里が祓えるのか、それを秘密にしてと言って来た理由……十分に頭を悩ませている。
「そうか……」
そう答えて心護は、口元に手を当てて黙ってしまった。
視線を下げたままの琴理の脳内は慌ただしくなる。
(どうしましょう……心護様を悩ませてしまいました……!)
「はーい、心護様琴理様、お夕飯ですよ。お腹空いているときに悩んでも答えなんて出ませんわ」
そう言って入ってきた詩は笑顔だった。
その明るい様子に、琴理は心の中でほっと息をついた。
自分が落ち込んでいるとき、周囲が明るくいてくれるのは頼もしいのだと感じた。
「ありがとうございます、詩さん」
「いいえ。私の迎えが遅くなったのも理由でしょうから……とにかく今は食べましょう! 今日はデザートを豪華にしてみましたよ」
琴理に向けて刹那憂いを帯びた詩だが、大きな笑顔で配膳を始める。
食事の間心護は考え事をしているようで、いつものようには話さなかった。
琴理も、今淋里のことを訊かれても答えられることはなかったので、心護が黙っていることに少し安心してしまった。